―― 麻倉さんは男性歌手として活躍されていましたが、叶さん以外の一緒にお仕事をしていた方々へのカミングアウトってどうだったんでしょうか?
東京のプロデューサーには『芸能界ではよくあることだ』と言ってもらいました。そして、3種類の人間に分けられるとも。①よかったねと応援してくれる人間 ②嫌だと思って引いてしまう人間 ③どっちでもいい無関心な人間。この『③無関心な人を味方につけることが重要』だって。
カミングアウト前には『男か女かわからないヤツを連れている事務所は信用できない』って影で言われたりしてましたね。そんな言葉、たとえお酒の席でも許されないことです。気に入らないなら、その後一緒に仕事をする必要もありません。
―― 味方になって、そう言ってくださる叶さんのような方が近くにいるのは、とても心強いですね…!
1人でも理解してくれる人がいれば、希望が見える。たとえ相手の気持ちを理解できなくても、せめて『否定しない』でいてほしいです。
―― また、既にたくさんのファンがいる状態だったと思いますが、ファンへはどのようなかたちで伝えたのでしょうか?
滋賀医科大学の1,000人以上が集まる学園祭ライブに、毎年『KEITA』として出演させていただいていました。そして2009年の学園祭で、1曲目の終わりに上から羽織っていた白衣を脱いで、ドレス姿で『心が女性』だとカミングアウトしました。客席からは『頑張れー!』『そんなの関係ない!』という言葉が、拍手と一緒にかけられました。『知ってたー!』という声も。(笑) ステージ終了後、実行委員20名からも『男女関係なく、あなた本人が好きだからお呼びしている。来年からもよろしくお願いします』と応援の言葉をもらい、翌年はパンフレットの4ページを私のページとして割いてくれました。
その後の麻倉さんは、自分のことが好きになり、どんどん明るくなっていったそう。ホルモン療法や性別適合手術を経て、2010年「麻倉ケイト」として活動を再開されました。
―― セクシュアリティをオープンにして芸能活動も講演もされるようになって、印象的だった出来事はありますか?
ラオスに行ったときに言われた言葉が心に残っています。現地で自分のセクシュアリティのことを説明したら、『そんなの普通じゃん』なんて言われました。そして、『だって、素晴らしい絵を見たときに、これを描いたのは男ですか、女ですか、なんて聞かないでしょ?絵を描くのに、男も女も関係ない。同じ人間だ』って。―― ラオスのお隣のタイでは、18種類ものセクシュアリティがあるんだとか。