―― カミングアウトする前の段階で悩んでいる方も多いんです。カミングアウトするまでの過ごし方のコツなどはありますか?
私が唯一救われたのは『打ち込めるものがあった』こと。自分には音楽があった。医者の道から進路変更をしたのも、音楽が励ましてくれたから。それから、いじられそうになった時には、相手が興味を持ちそうな話題に話を逸らしたりしてましたね。
―― なるほど。確かにそのほうが盛り上がりそうですし、相手だって嬉しいはずですね。
あとは、幼い頃に祖母から、戦争中にいじめられた話を聞いてたんですが、そんなときに祖母がしていたんでしょうね、元気がない時には近くのお寺にお参りに行って話してくるように言われていた。仏様はちょっと笑っているようにも見えるし、後でこっそり助けてくれるんじゃないかと思っていた。本当は仲の良い先生に言いたかったんだけど、それが出来なかったから、仏様のような『心のよりどころ』が必要でした。
ホルモン治療のことも、当事者の知り合いができてから、やっと知ったんです。どうしたらいいかわからない時、悩んでいることをせめて誰かに知ってほしい。
―― 誰にも言えないって、1番しんどいですよね…。
講演などで、学校の先生から、“そういう子かな、と思った時にどうしたらいいか?”とよく聞かれます。大切なのは『問い詰めるのではなく、本人が言ってくれるのを待つこと。言いやすい環境をつくること』だと思います。